一口にフィットネスジムと言っても、総合型ジム、24時間ジム、低価格帯の小規模ジム、パーソナルジム、女性専用ジム、ピラティス・ヨガ・キックボクシングなどの特化型ジム、オンライン/ハイブリッド型サービスなど、経営業態はさまざまです。
総合型ジムは、トレーニングマシンだけでなく、スタジオ、プール、シャワー、更衣室などを備えるケースが多く、幅広い層を取り込める一方で、初期投資や人件費、設備維持費が高くなりやすい傾向があります。
一方、24時間ジムや低価格帯の小規模ジムは、省人化しやすく、忙しい利用者が好きな時間に通える点が特徴です。ただし、低価格競争、マシンメンテナンス、無人時間帯の安全管理、防犯対策、問い合わせ対応などが重要になります。
また、パーソナルジムは客単価を高めやすい一方で、トレーナーの質や採用・教育が収益を左右します。女性専用ジム、シニア向けジム、ピラティス、ヨガ、暗闇フィットネスなどの特化型ジムでは、ターゲットを明確にしたサービス設計が求められます。
近年、健康志向の高まりとともにフィットネス事業への関心は高まっています。フランチャイズとして開業することで、既存のブランド力や出店ノウハウ、マシン選定、会員管理システム、広告運用、トレーナー研修などを活用できる点は大きなメリットです。
一方で、フィットネス事業では、立地選定、設備投資、会員獲得、退会抑制、スタッフ教育、安全管理など、複数の運営課題があります。フランチャイズに加盟すれば必ず成功するわけではないため、商圏や競合状況、収支計画を事前に確認することが重要です。
特に現在は、低価格ジムや24時間ジム、パーソナルジムなどの競合が増えています。ブランド力だけでなく、ターゲット設定、価格戦略、退会防止施策、店舗運営の効率化まで支援してくれる本部かを見極めましょう。
フィットネス業界は、コロナ禍で一時的に縮小したものの、その後は回復・拡大傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、2024年度のフィットネス市場は7,100億円前後に達し、これまで過去最高だった2019年度の7,085億円を上回る規模になる見通しです。
コロナ禍で需要が落ち込んだ2021年度の5,248億円から3割超の増収となっており、健康志向の高まり、新規出店、SNSを活用した集客、低価格帯ジムや小規模ジムの広がりが市場回復を後押ししています。
また、フィットネス事業を展開する主要大手15社の店舗数は、2024年度末時点で6,500店前後に達する見込みで、10年前から2.3倍に増加しています。特に、低価格帯の小規模ジムやコンビニジムの出店増が市場拡大に寄与しています。
ただし、市場全体は拡大していても、すべての事業者が順調に収益を伸ばしているわけではありません。帝国データバンクの調査では、2024年度に損益が判明した約80社のうち、48.8%が黒字だった一方、減益・赤字の合計は47.6%となり、二極化が鮮明になっています。
低価格ジムの増加による顧客獲得競争、建設費高騰、新規出店の投資負担、トレーナー人件費、電気代、マシンメンテナンス費などが収益を圧迫する要因になっています。フィットネスフランチャイズを検討する際は、市場の成長性だけでなく、出店エリアで利益を出せるモデルかを確認することが重要です。
フィットネスジムの運営には、会員制ビジネスとして継続収益を見込めるというメリットがあります。会員数が安定すれば、月会費によって売上予測を立てやすくなります。
一方で、入会後に利用頻度が下がる、休会・退会する、競合ジムへ乗り換えるといったケースもあります。収益を安定させるには、新規会員獲得だけでなく、継続率、退会率、LTV、利用頻度、休眠会員へのフォローを管理することが重要です。
フランチャイズ本部が会員プランや料金体系を用意している場合、未経験でも運営を始めやすい点はメリットです。ただし、地域の競合、ターゲット層、利用時間帯、提供サービスによって、適した料金プランは変わります。低価格プラン、パーソナル指導、女性専用、シニア向け、法人会員、家族プランなど、ターゲットに合ったプラン設計と価格戦略が必要です。
また、フランチャイズでは、マシンの使い方、会員管理、接客、販促、トレーナー教育などを本部から学べる場合があります。未経験でも参入を検討しやすい点はメリットですが、フィットネスは利用者の身体に関わるサービスです。マシンの誤使用、無理なトレーニング、体調不良、事故への対応が必要になるため、安全配慮、応急対応、健康状態確認、トレーナー研修が整っている本部を選びましょう。
自社ビルや所有地に空き区画がある場合、フィットネスジムへの転用は空室対策の一つになります。24時間ジムやパーソナルジムは、駅前一等地でなくても、ターゲットを絞ることで集客できる場合があります。
ただし、業態によっては視認性、駐車場、駅からの距離、防音、床荷重、シャワー・更衣室の有無、近隣への騒音配慮が重要です。所有物件であっても、ジムに適した条件を満たすか確認しましょう。
また、すでに清掃や設備メンテナンスを外注している法人であれば、既存の契約ルートを活用し、ジム運営に必要な清掃・設備管理の体制を整えやすい場合があります。既存リソースを活用できる点は法人ならではの強みです。
フィットネス事業は、既存事業との組み合わせで相乗効果を生みやすい分野です。飲食・小売業であれば、健康食やプロテイン、サプリメントの販売と組み合わせられます。医療・介護・接骨院であれば、治療後の運動習慣づくりや予防サービスの受け皿として展開できます。
不動産業であれば、自社管理物件の入居者向け特典や共用施設としてジムを活用し、物件の付加価値向上を図ることも可能です。さらに、企業向け福利厚生、学校・スポーツ団体、自治体の健康づくり事業と連携することで、地域に根差した会員獲得も期待できます。
フィットネス事業を自社で展開することは、従業員の健康増進や福利厚生施策としても活用できます。社員向けにジム利用制度を整えれば、運動不足解消やメンタルヘルス対策の一環として打ち出せる可能性があります。
また、健康経営に取り組む企業姿勢を社内外に示す材料にもなります。経済産業省は、健康経営優良法人認定制度について、優良な健康経営を実践している法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから社会的評価を受けられる環境を整備する制度と説明しています。
ただし、健康経営優良法人の認定は、従業員の健康課題把握、制度設計、実施体制、効果検証など多面的に評価されます。ジムを保有しているだけで認定につながるわけではないため、健康経営施策の一つとして活用する視点が重要です。
フィットネス業界では、トレーナーやインストラクターの採用・教育が課題になります。特にパーソナルジムや高付加価値型ジムでは、トレーナーの知識、接客力、継続フォローが顧客満足度に直結します。
一方、24時間ジムや低価格ジムでは省人化しやすい反面、無人時間帯の安全管理、マシン利用説明、問い合わせ対応、店舗清掃、設備保守をどう行うかが重要になります。スタッフが少なくても運営できるからといって、管理業務が少ないわけではありません。
また、運動への関心は高まっている一方で、継続的に運動できていない層も多く存在します。スポーツ庁の調査では、令和7年度の20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は51.7%で、第3期スポーツ基本計画の目標である70%程度には届いていません。
フィットネスジムでは、運動未経験者や初心者が通いやすい導線、低負荷プログラム、サポート体制、価格設定を整えることが重要です。既に運動習慣のある人だけを取り合うのではなく、初心者層をどう取り込むかが成長の鍵になります。
フランチャイズでフィットネス事業を開業する際には、初期費用と維持費用の両方を考慮する必要があります。業態によって必要な設備や人員が大きく異なるため、出店モデルごとに収支シミュレーションを行いましょう。
初期費用には、フランチャイズ加盟金、保証金、物件取得費、内外装工事費、トレーニングマシン、フリーウェイト、床補強、防音工事、空調、シャワー・更衣室、入退館システム、防犯カメラ、決済システム、広告宣伝費などが含まれます。
特に、マシンの種類や台数、店舗面積、シャワー・更衣室の有無、防音・床補強の必要性によって初期費用は大きく変わります。24時間ジムでは入退館管理やセキュリティ設備、無人時間帯の監視体制も必要です。
維持費用には、ロイヤリティ、広告分担金、家賃、水道光熱費、マシンメンテナンス費、清掃費、セキュリティ費、人件費、保険料、会員管理システム利用料などが含まれます。
ロイヤリティは売上に応じて支払う方式や定額方式など、本部によって異なります。広告費は、ブランド認知や会員獲得のために必要な費用であり、本部が一部を担う場合もあります。
低価格ジムでは、会員数を確保できても、家賃や電気代、マシン保守費、広告費などの固定費が重くなると利益が残りにくくなります。会員数だけでなく、損益分岐点、退会率、会員獲得単価、LTVまで含めて確認しましょう。
近年、フィットネス業界は健康志向の高まりを背景に回復・拡大しています。特に、24時間ジム、低価格コンビニジム、パーソナルジム、女性専用ジム、ピラティス、シニア向けプログラムなど、消費者の多様なニーズに対応したサービスが広がっています。
コロナ禍で一時的な縮小が見られましたが、現在は回復基調にあり、オンラインフィットネスやハイブリッド型ジムといった新たなサービス形態も登場しています。地方都市への展開や高齢者向けサービスの需要増加も、業界の成長を支える要因となります。
フィットネス業界では、低価格・省人型のジムと、高価格・高付加価値型のジムの二極化が進んでいます。
利便性とコストパフォーマンスを求める顧客層に向けた24時間ジムやコンビニジムは、市場を拡大しています。このビジネスモデルでは、省人化や無人運営を取り入れることで人件費を抑え、低価格な会費を実現しやすくなります。
一方で、競合が増えているため、価格だけで差別化するのは難しくなっています。清潔感、マシンの使いやすさ、混雑状況、入退館のしやすさ、セキュリティ、初心者向けサポートなど、総合的な利用体験が重要です。
高価格帯のパーソナルジムや特化型ジムは、トレーニングに専門性や成果実感を求める顧客層に支持されています。専属トレーナーによる個別指導、食事指導、成果測定、プライベート空間などが付加価値になります。
高単価を狙える一方で、トレーナー品質や接客力、継続フォローが収益を左右します。成果が見えにくい、予約が取りにくい、トレーナーとの相性が合わないといった理由で退会につながることもあるため、顧客満足度管理が欠かせません。
女性専用、シニア向け、初心者向け、ピラティス、ヨガ、キックボクシング、暗闇フィットネスなど、目的やターゲットに特化したジムも増えています。特定層に向けたサービスは、競合との差別化を図りやすい点が特徴です。
ただし、ターゲットを絞るほど商圏内の見込み客数が重要になります。出店前には、地域の人口構成、競合状況、価格帯、交通導線、利用時間帯を確認しましょう。
フィットネス業界は競争が激化しており、特にフランチャイズモデルでは競合他社との差別化が成功の鍵となります。顧客の多様なニーズに応えるための明確な戦略が求められます。
市場での競争優位性を確保するには、特定の顧客層に焦点を当てることが効果的です。女性専用ジムは女性が安心して利用できる環境を提供し、シニア向けジムは体力づくりや健康維持に特化したプログラムを提供できます。
また、初心者向けに低負荷トレーニングを用意するジムは、フィットネスに不慣れな層を取り込むことが可能です。ターゲットを明確にすることで、広告、料金プラン、設備、接客内容を一貫させやすくなります。
フィットネス業界では、テクノロジーを活用したDXも重要です。会員管理システム、アプリ、予約管理、入退館管理、体組成データ、トレーニング記録、オンライン指導などを活用することで、顧客体験を向上できます。
成果の可視化、アプリでのトレーニング記録、チャットサポート、休眠会員への通知、キャンペーン配信などは、退会防止にもつながります。オンラインフィットネスやハイブリッド型サービスと組み合わせることで、店舗外の接点を持つこともできます。
地域住民とのつながりを重視する地域密着型ジムも増加しています。健康促進イベント、初心者向け体験会、シニア向け運動教室、法人向け福利厚生プランなどを通じて、顧客との信頼関係を構築できます。
地域との連携を強化することで、他社との差別化が図れます。自治体の健康づくり事業、学校・スポーツ団体、医療・介護施設、接骨院などと連携できるかも検討しましょう。
フィットネス事業では、新規会員の獲得だけでなく、退会防止が収益に直結します。利用頻度が下がった会員へのフォロー、初心者向けサポート、成果の見える化、イベント開催、コミュニティづくりなどにより、継続率を高める工夫が必要です。
また、口コミやSNS投稿は新規入会に影響します。清潔感、スタッフ対応、マシンの使いやすさ、混雑状況、退会手続きの分かりやすさまで含めて、顧客体験を設計しましょう。
24時間ジムや無人ジムでは、人件費を抑えやすい一方で、安全管理とトラブル対応が重要です。スタッフがいない時間帯に、体調不良、転倒、マシンの誤使用、盗難、迷惑行為、入退館トラブルなどが発生する可能性があります。
入会時の健康チェック、マシン利用説明、注意喚起掲示、スタッフ研修、AED設置、緊急連絡フロー、事故報告ルールが整っているか確認しましょう。無人時間帯でも利用者がすぐに連絡できる緊急通報システムや、防犯カメラ、入退館管理、遠隔監視の仕組みも必要です。
また、トレーニング中の事故や体調不良が発生した場合の対応範囲、保険加入、責任分担も確認しておくと安心です。
フィットネスジムでは、月会費、パーソナルトレーニング、回数券、長期契約、キャンペーン料金など、契約内容が複雑になりやすい場合があります。
広告表示と実際の料金・サービス内容が異なる、解約条件が分かりにくい、返金対応でトラブルになるといったリスクにも注意が必要です。東京都は、パーソナルトレーニング契約について、契約内容、金額、中途解約条件を十分に確認するよう注意喚起しています。
加盟前には、本部が用意する会員規約、解約・休会ルール、広告表現、返金対応、トレーニング中の事故対応が適切か確認しましょう。利用者に誤解を与えない説明と、契約条件の明確化が重要です。
フィットネスフランチャイズを選ぶ際は、ブランド力や加盟金だけでなく、開業後に会員を獲得し、継続してもらう仕組みがあるかを確認しましょう。
フランチャイズでフィットネス事業を成功させるためには、本部選定、立地、設備、スタッフ教育、会員管理、安全管理などを総合的に確認する必要があります。
まず重要なのは、出店前の商圏分析です。周辺人口、昼夜人口、競合ジム、価格帯、ターゲット層、駐車場、駅距離、生活導線を確認しましょう。業態によって、駅前立地が向いている場合もあれば、駐車場付きの郊外立地が向いている場合もあります。
開業後は、会員数、入会数、退会率、休会率、利用頻度、LTV、会員獲得単価、設備稼働率、マシン故障率、口コミ評価を継続的に確認する必要があります。フランチャイズ本部がこれらの数値管理をどこまで支援してくれるかを比較しましょう。
また、フィットネス事業は身体に関わるサービスであるため、安全配慮も欠かせません。マシン利用説明、健康状態確認、応急対応、事故報告、保険加入、会員規約の整備まで確認しておくことが重要です。
市場は拡大していますが、低価格競争や設備投資、人件費、退会率管理などの課題もあります。魅力的なサービスと顧客満足度の向上を目指しながら、自社の既存資産や地域特性に合ったフィットネスビジネスを展開しましょう。




【注釈】
※1 リユース経済新聞( https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_5804.php)
※2 厚生労働省( https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf)
日経コンパス( https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0901 )
※3 株式会社AZWAYによるネットアンケート『「2024年にチャレンジしたいこと」1位:健康・美容、2位:スキル取得・向上、3位:副業、4位:運動・筋トレ』
( https://azway.co.jp/media/challenges-2024/)