新しく事業を始めるに当たって税金について考えることは大切ですが、そもそも開業する際の事業形態によって税金の支払額や税制上の取り扱いが変わってくる点に注意してください。
一般的な事業形態としては個人事業主として開業する場合と法人として開業する場合の2パターンがあり、さらに独立的に事業を営むのかフランチャイズで運営していくのかといった違いもあります。
法人として開業する場合、注意すべき税金の種類としては法人税や法人住民税、法人事業税、そして消費税・地方消費税の4種類があります。
法人税とは個人事業主における所得税のようなものであり、法人として年間に獲得した所得の金額に対して税金が課せられるという仕組みです。また法人税は国税であり、法人として事業を継続している年数や所得額、事業の種類や資本金の額など様々な要素によって税率が変化することも重要です。
一方、法人住民税や法人事業税は地方税であり、法人として登記している地方自治体や事業所などを運営している地方自治体などへ支払う税金となります。これらの税率についても一律でないため、詳細は各自治体が定める税率表などを確認しなければなりません。
個人事業主として事業を始める場合、まず注意すべきは所得税です。これは1年間で得られた所得に対して課せられる国税であり、個人事業主は毎年の確定申告によって総収入や経費を申告して所得額や所得税額を決定します。
また地方税としては個人事業税や住民税などがあります。個人事業税は法定業種に該当する事業主に対して、一定額以上の売上などがある場合に支払うべき税金であり、都道府県に対して支払う税金です。一方、住民税は住所のある市町村自治体へ支払う税金であり、所得額に対して自治体ごとの税率を乗算した上で税額が決定されます。
なお、個人事業主であっても「課税売上高1千万円超」へ該当する場合、消費税の納税義務が発生する点は重要です。ただし適格請求書発行事業者として登録すれば課税売上高1千万円未満でも納税事業者になることが可能です。
法人であっても個人事業主であっても、税金の支払いに関して重要になるのは「売上」や「所得」と「税率」の関係となります。
例えば所得税の場合、税額を計算するための税率は所得額に応じて変動する「超過累進課税制度」が採用されており、その最高税率は「45%(課税所得額4千万円以上)」に達します。
それに対して法人税の場合、普通法人であれば資本金1億円を境目として、開業年度に応じて税率が決定されており、仮に平成31年4月1日以後に開業した場合であれば税率は「23.20%」になります。
なお、個人事業主の所得税において税率が23%となるのは課税所得が695万~899万9千円の間にある場合であり、言い換えればそれ以上に稼ぐ場合は法人として経営した方が所得税額は抑えられるということになるでしょう。
※参考元:国税庁|No.2260 所得税の税率(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
※参考元:国税庁|No.5759 法人税の税率(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm)
消費税は法人でも個人事業主でも一定の要件を満たせば納税義務が生じる国税です。反面、年間の課税売上高が1千万以下の事業者や、開業から2年以内の事業者であれば納税義務が免除される税制上の優遇措置があることもポイントになります。
ただし令和5年10月1日よりインボイス制度が開始されており、適格請求書発行事業者としての登録を受けた事業者は課税売上高が1千万以下であっても消費税を納税することを条件として、適格請求書を発行することが可能です。
なお、仕入れなどで課税事業者へ消費税を支払っている場合、自分が課税事業者であれば「仕入税額控除」を適用できます。
※参考元:国税庁|消費税のしくみ(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm)
法人の中でもフランチャイズを利用した法人フランチャイズとして開業する場合、事業をスタートする時にフランチャイズ本部へ加盟金を支払います。そしてこの加盟金は会計処理として支払手数料や長期前払資産として計上することが可能であり、その年の売上やそれ以後の売上などから経費として差し引きして、課税所得額を減らせる点が重要です。
なお、支払手数料として全額を支出事業年度に処理する場合、加盟金が20万円未満の少額の時となっており、それ以上の金額であれば長期前払費用として計上します。ただしフランチャイズ契約に関して期間の定めがない場合、原則として5年間が償却期間となることに注意してください。
個人事業主として開業した場合、売上が赤字で所得が発生しなければ、所得税や住民税といった税金の支払いは発生しません。しかし法人住民税が均等割で計算される場合、たとえ事業として赤字であっても資本金額や従業員の数によって税金が発生してしまいます。
均等割の法人住民税の納税額は最低2万円、事業規模によっては最大54万円となり、事業主にとって経済的な痛手となるでしょう。
※参考元:総務省|法人住民税(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_08.html)
フランチャイズ加盟金の金額が20万円未満なのか、20万円以上なのかで会計処理が異なります。
20万円未満で支払手数料として処理できる場合、開業年の売上から全額を差し引くため、それ以降の売上に対して経費計上はできません。一方、長期前払費用として計上する場合は毎年に一定の割合で計上しますが、フランチャイズ契約の期間の有無などによって条件が変わる点に注意してください。
明らかに売上が少ない場合、個人事業主の方が納税額は安くなります。しかし一定以上の売上や利益が見込まれる場合は、法人フランチャイズとして開業した方が税制上のメリットは大きくなりやすいことがポイントです。
またフランチャイズであれば新しく始まったインボイス制度やその他会計処理についても相談できるため、適正な節税対策を実施できることも強みです。
【注釈】
※1 リユース経済新聞( https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_5804.php)
※2 厚生労働省( https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf)
日経コンパス( https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0901 )
※3 株式会社AZWAYによるネットアンケート『「2024年にチャレンジしたいこと」1位:健康・美容、2位:スキル取得・向上、3位:副業、4位:運動・筋トレ』
( https://azway.co.jp/media/challenges-2024/)