近年は値上げラッシュや円安、コロナによる影響などから、要らなくなった物を買い取りに出して少しでもお金に換えようとする人が増えています。また一方では高級ブランド品をよりリーズナブルに手に入れたいという人も多く、買い取り事業はその需給バランスの良さから今注目されているビジネスのひとつです。
一口に買い取りと言っても対象となる品物は店舗によって色々ですが、とくに貴金属やブランド品は高値で取り引きされることが多いため、フランチャイズにおいても人気を得ています。
買取ビジネスを成功させるには、根本的に様々な商品に対して適正な評価や値付けを行える能力や経験が必要不可欠です。単にブランド品の真贋を見分けるだけでなく、トレンドや市場のニーズを把握して価格設定を行えなければ、コストを最適化して売上をアップさせていくことも叶いません。
その点フランチャイズであれば本部がノウハウを提供してくれるため、新規参入のハードルが低いことは、買取ビジネスの開業を考えている人にとって重要でしょう。
値上げや円安といった背景にくわえ、環境問題やSDGsへの意識も高くなっている昨今、“不要になった物は売る”という考えの人は増えています。今後も、買い取り市場は成長が見込めると言えるでしょう。
実際、リサイクル通信の行ったリユース市場規模の推計によると、2021年の買い取り市場規模は「前年比11.7%増(2.7 兆円)」という結果に。さらに、2023年のリユース市場規模は前年比7.8%増の3.1兆円となり、14年連続で拡大しています。
物価上昇や訪日観光客の回復が成長を支え、「ブランド品」は19.4%増、「衣料・服飾品」は15.5%増でした。ネット販売や店舗販売が好調な一方で、フリマアプリの成長率は鈍化しています。市場は拡大を続けており、2030年には4兆円に達すると予測されています。
何か事業を始める際、店舗を構える場合には物件賃貸料や内外装費、設備費などが必要となります。その点、買い取りフランチャイズでは3坪程度の小さなスペースがあれば良く、さらに顧客が“品物を売る”という目的ありきで来店する都合上、立地条件にもそこまでこだわる必要がありません。出張買い取りというスタイルで運営する場合にはそもそも実店舗自体が不要です。つまり開業資金を抑えてスタートできるため、この点は大きなメリットと言えるでしょう。
また、買い取り業務では通常たくさんの人材を必要とせず、オーナー1人で運営するケースも多いです。店舗費用だけでなく、教育費等を含めた人材にかかる費用も抑えて運営することができます。
買い取りビジネスに興味がある人のなかには、自分の好きな商品を好きな価格で買い取って自由に販売できると考えている人も少なくないと思います。
しかし実際は、フランチャイズに加盟した場合、運営本部により決められたルールに沿って営業するのが通常です。鑑定業務自体を、本部が代行するケースもあります。これらはどの店舗でも統一したサービスを顧客に提供するための仕組みなのですが、自由に買い取り業務を行いたいと思う人にとっては、こうした縛りがデメリットに感じられることもあるかもしれません。
買取ビジネスをフランチャイズで開業したり運営したりしていくとして、どれくらいの初期費用や維持費用がかかるのか、事前にある程度の見通しを立てておくことは大切です。
フランチャイズ経営では開業時の契約によってイニシャルコストやランニングコストが変わるものの、一般的には以下のような費用について考えるべきとなります。
実店舗の土地や建物をオーナーが用意する場合、当然ながらそれらの取得費用がかかります。また開業にかかる法的手続きを完了するための費用もあるでしょう。ただし店舗を持たずに運営する場合は初期費用を安く抑えることも可能です。
さらにフランチャイズ本部によっては加盟料や保証金を支払う必要があり、その他にもある程度の目利きをするための初期研修が行われる場合、その研修費が別途請求されることもあります。
従業員を雇わないとしても店舗を構えて運営する場合、家賃や水道光熱費、各種税金といった必要経費はまずかかります。また売上に応じてフランチャイズ本部へロイヤルティ(権利使用料)を支払う必要も考えなければなりません。
なお、買取ビジネスでは顧客から様々な商品を買い取ってリユース商品として提供するという性質上、どうしても先に買取にかかる現金を用意しておくことが必要です。
フランチャイズのロイヤリティには、以下の2つの方式が一般的です。
このロイヤリティの形態が、収益性に大きく影響するため、契約前にどちらの方式かを確認することが重要です。特に、新規開業で収益が不安定な時期には、定額方式が経営を圧迫する可能性もあるため、ビジネスプランとの適合性を見極めることが求められます。
買取ビジネスでは、鑑定や査定に関する高度な知識が必要です。未経験から始めるオーナーが多いことから、フランチャイズ本部は研修制度を設け、商品知識や査定スキル、接客スキルを指導しています。これにより、未経験者でもスムーズに事業運営ができるよう支援しているのです。
全国的なブランド知名度を活かし、マーケティング活動や販促施策の支援も提供されます。特に集客が重要な業態であるため、広告宣伝やSNSマーケティングを通じて、地域ごとの特性に応じたプロモーションが行われ、集客力の向上に貢献しています。
フランチャイズ本部は、経営のアドバイスも提供しています。例えば、適正価格での買取と適切な在庫管理、コスト削減のアドバイスを受けることで、効率的な事業運営が実現できるようサポートしています。最新の在庫管理システムの導入を支援するフランチャイズもあり、効率的な商品管理と売上分析が可能です。
買取市場は、環境保護やリユースの意識が高まる中で成長を続けています。しかし、競合店舗が増加し市場が成熟化する中で、他社との差別化が求められています。顧客サービスの向上や独自の付加価値を提供することが、競争に打ち勝つための重要なポイントです。
地域ごとに異なる需要特性を理解し、ターゲット層に合わせたサービスを展開することが重要です。高齢化が進む地域では、遺品整理の需要が高い一方、都市部ではブランド品のリユース需要が多いなど、地域のニーズに応じた戦略を立てることが、成功の鍵となります。
未経験から買取フランチャイズを開業し、フランチャイズ本部のサポートを活用して成功したケースが数多くあります。例えば、開業前に徹底した研修を受け、鑑定スキルと市場の知識を深めたオーナーが、開業初月から黒字経営を達成した事例も。しっかりとした研修を受けたうえで、顧客対応に注力し、リピーターを増やすことで、店舗拡大に成功した例もあります。
一方で、ロイヤリティの高さや立地選定のミスなどにより、資金不足に陥った失敗事例もあります。高額なロイヤリティの負担が重くなり、収益を圧迫してしまうケースも。また、競合の多い地域に出店して集客に苦労し、赤字経営に陥ったケースもあるため、出店地域やロイヤリティ契約の内容を慎重に検討する必要があります。
買取ビジネスを運営するためには、古物商許可が必要です。以下は、許可取得までの主な流れです。
申請には手数料がかかり、都道府県によって異なりますが概ね19,000円程度です。また、許可取得後も帳簿の備え付けや定期的な報告義務など、法令を遵守することが求められます。
偽物や盗品を誤って買い取ると、法的なトラブルや損失に繋がるリスクが存在します。そのため、フランチャイズ本部から提供される鑑定支援や専門知識を活用し、正確な鑑定を行うことが重要です。また、日頃から市場での相場やトレンドを把握することで、偽物リスクを減らすことができます。
買取ビジネスでは、買取後の商品が売れないと在庫リスクが生じます。買取時には需要を慎重に見極め、売れ筋商品に注力することが大切です。また、貴金属など市場価格が変動しやすい商品は、適切な価格設定を行い、リスクを最小限に抑える工夫が求められます。
買取フランチャイズでは、価値のある商品を顧客から買い取り、それを欲しいと思う消費者に対して売却するという仕組みで利益が発生するため、そもそも価値のない商品に過剰な値付けを行ってしまったり、消費者のニーズを把握できずに買い手のいない商品を仕入れてしまったりすれば、ロスが増大して失敗してしまう恐れが増大します。
買取ビジネスでは多種多様な商品が持ち込まれるからこそ、一朝一夕に全ての価値を自分でチェックする能力は身につきません。そのためフランチャイズ本部と密に連携して情報共有体制を構築しておき、しっかりとサポートを受けながら事業を運営していくことが大切です。
また事業に慣れるまでは小規模の取引から始めて、自分でもトレンドや流行に意識を向けるようにしましょう。そのほか、フランチャイズ契約の内容にしっかりと目を通すこともかかせません。
【注釈】
※1 リユース経済新聞( https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_5804.php)
※2 厚生労働省( https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf)
日経コンパス( https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0901 )
※3 株式会社AZWAYによるネットアンケート『「2024年にチャレンジしたいこと」1位:健康・美容、2位:スキル取得・向上、3位:副業、4位:運動・筋トレ』
( https://azway.co.jp/media/challenges-2024/)